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鈴竹の石徹白ロッド

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このサイトでも時々画像が登場している丸竹で作ったフライロッドのことを紹介します。

日本には多種類のメ竹(笹類)が自生していますが、その中に篶竹(すずたけ)というすばらしいメ竹があります。直径は5㎜~8mm長さは1m~2mたらずのメ竹で標高500m以上にしか自生しません、一般的にはあまり利用されていませんが、一部の地域で高級なカゴや竹座布団の最高級材料として使われてきました。ところがこの竹をフライロッドにすると六角バンブーロッドで言うなら一番手間がかかる中空仕上げのようなレスポンスの良いすばらしい竿になります。もう長年使っていますが、というか自分の釣りでは「すず竹ロッド」オンリーです。少なくとも日本の渓流(とくに石徹白川)でイワナやアマゴと遊ぶのにこれほど相応しい竿はないと断言できます。「日本の鱒たちと日本の竹で遊ぶ心地よさ」ということなのか、他のどんなロッドよりも趣があるので結局いつもこの竿を使っています。

 横浜の高校教師だった東清美氏というフライフィッシャーが2000年頃から和竿の製法に習い野に自生するメ竹でフライロッドを作ることを紹介されました。東氏は「丸竹ロッド」と命名し「丸竹倶楽部」というグループを主宰しロッド作りを広めようとされました。東氏本人はとても残念なことに2005年に若くして病死されてしまったが、その仲間たちが今も東氏の意思を引き継ぎ丸竹ロッドを作り続けている。東氏は石徹白川にも何度か来てくれたし私のロッド作りの師匠の一人です。
東氏が亡くなるすこし前にアメリカの有名バンブーロッドビルダーのマリオ・ウィジニッキ氏が来日したことがありその時、東氏自作の丸竹ロッドを「日本にはこんな竹竿がある」と紹介したところマリオは「こんな竹が存在するのならわざわざ6角にする必要がないじゃないか」と、とても驚いていたという。

私的にはメ竹の中で特に「すず竹」が気に入っているこの竹は高野竹とも呼ばれておりヘラ釣り用の和竿作りで穂持ちとよばれる先端から二本目の一番力のかかるところに使われる丈夫な竹である。あまり太くならないが、細くても肉が厚く硬くて粘り強いので7フィートくらいの3番ロッドに仕立てると細身のとても「心地いい」ロッドになる。
日本のフライフィッシングもこの30数年でやっと日本独自のかたちに熟成してきたので、ロッドに関しても日本の渓流で日本の鱒たちと遊ぶための専用調子ともいえるロッドも多くなってきた。そんな要求にも「真竹ロッド」や「すず竹ロッド」は妙にマッチする。趣だけでなくまったくの「実用的道具」としても一級品であることを広めたいとおもっている。
             
私も以前はバット部分とティップ部分を別の竹から選別し組み合わせて自分の好みの調子のロッドを作っていましたが、最近は一本の「すず竹」を野に生えていた姿そのままでフライロッドにするということに ロマンを感じ、「野にあったがままに」というコンセプトのロッドしか作らないようになりました。生えていたままの竹を「ほとんど切り詰めないように2本継ぎか3本継ぎかにする」だけなんですが、このほうが自然との一体感のような「やさしさ」を感じられるし、本当の意味で「森からの贈り物」のような気がする。そんな、「すず竹単組(ひとえくみ)ロッド」を少しでも多くのフライフィッシャーに実際に使ってもらいたいと思うのです。ただし、野に生えたままでフライロッドになるような竹となると、そうやすやすとはみつからないから、きっと年に数本くらいしかできないでしょうが、 私が愛する「日本のフライフィッシング」の独自な道具として後世に伝わっていったらいいなと思っている。作り続けることで東清美氏の思いも引き継いでいきたいと願う。

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     「すず竹単組石徹白ロッド」(すず竹ひとえくみいとしろロッド)
仕様、グリップは布袋竹リールシートは花梨、
オリジナル石徹白ケース付き
天然素材のままなので長さも調子も一本一本違います。
ちゃんと使える道具として定着してほしいので
価格もお安く提供していきたいと考えております。
お問い合わせは 
ssmkj@apost.plala.or.jp までメールでお願いします。

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実は、自分のなかでは、「すず竹ロッド」製作のブームは数年前に終わっていたのですが、昨年フィールドにて私が使っていた「すず竹ロッド」をFFの名手として有名なY氏に絶賛していただきその後も会うたびに「すず竹すごくいい」とおだてられ、とうとう少しづつでも販売用に製作していこうとなった次第です。

フライロッドを単に道具としてみるだけならグラファイトロッドだけで充分なのでしょうが、いまだにバンブーロッド(六角竹竿)が支持され実際に使い続けているフライフィッシャーが、たくさん存在するわけです。それも竹が自生してないアメリカにも大勢いることは、フライフィッシングと竹竿の相性がよいというだけでは、片づかない何かがあるのでしょう。
竹を輸入してまで六角形にはりあわせ竿を作り、もっと軽くそしてシャープに振れる竿にするために芯を抜いた中空のロッドまで作っているアメリカのバンブーロッドビルダーがこの「すず竹」を見たらさぞかしびっくりすることでしょうね。身近にこんな竹があったら手間をかけて中空ロッドなぞ作らなかったのにと思うかもしれないですね。

by itoshiro-sp | 2012-07-13 12:54 | ロッド  

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