カテゴリ:てんから( 6 )

 

幸四郎さんの「てんから」

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鴛谷雅之(オシタニマサユキ)さんは僕より三っつ先輩だ。
石徹白フィッシャーズホリデーの実行委員として一緒にやってきた仲なので、もう15年以上の付き合いになる石徹白の友人です。
マサユキさんは釣りはやらないけど、おじいさんの幸四郎さんが「てんから名人」だった話をよく聞かせてくれる、今回のイベントでもいろいろなむかし話をしてくれた。
幸四郎さんは明治中期の生まれで家業は旅館(谷屋旅館)だったから、職業的な色が濃い釣りだったのだろう。お客さんに提供するために、エサ釣りも「てんから」も両方やったが、「てんから」の時は「浮かせて釣る」というこだわりがあったという「沈めたらエサ釣りと同じになってしまう」と言い毛ばり巻きにおいても、胴を巻く糸に油を染みこませるなどの工夫をし、釣りの時も水を吸って浮きにくくなると新しい毛鉤に変えていたらしい、その話を聞いたハヤトさんも「俺たちも毛鉤を沈ませることはしない」と言われた。そうなると、「石徹白てんから」は浮かせて流すのが決まりごとだったのかもしれない。

後年の幸四郎さんはお寺の副住職のような役におさまり、殺生事と縁を切ることになったという。
そして幸四郎さんの子に当たるマサユキさんのお父さんも旅館主として釣りは良くしたが、「てんから釣り」はしなかったというから、「てんから」はだれでもできたわけではなかったようだ。

また、以前に紹介した、山本素石氏の随筆に登場する目の不自由な人の「てんから」では釣り下っていったという記述があるが、幸四郎さんもハヤトさんも釣り下りはせず、上流へ上っていく釣りが信条だったというから、「石徹白てんから」の基本はやはり釣り上りなのだろう。

そんな昔の人も、石徹白の「てんから」は毛ばりを浮かすことにこだわっていたと聞くと、なんかかっこ良くてうれしくなる。

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サクラマスレストレーションの安田さんが「てんから」で釣った本流アマゴ。












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by itoshiro-sp | 2016-06-11 14:18 | てんから  

Mitsuaki Kebari

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石徹白の上杉光明さんが、お亡くなりになった。
ミツアキさんは石徹白テンカラの数少ない伝承者でした。
まだ73才だったので、まだまだいろいろ昔話を聞きたいと思っていたのにほんとうに残念です。

以前、ミツアキさんからもらった手巻きの毛ばりは、本当に貴重なものになってしまいました。
大切に保存します。
NHKの取材の時に僕の作った竹竿を、使ってくれと差し上げたんですが、「もったいないからしまっとく」と言って、けっきょく使ってもらえなかったんですが・・。
もう一度一緒に釣りをしたかったな。


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「石徹白てんから」のときのミツアキさん
左がハヤトさんで右がミツアキさん、
ハヤトさんやタケさんと悪さをした子供の頃の話をして
「ハヤトは今じゃ~組合長な~んて言ってるけどな~」ってイタズラっぽく笑う顔がよかった。
そんな時ハヤトさんは「ミツアキは俺のことはなんでも知っとるでかなわん」と言って目をパチパチするのです。
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たぶんこの時がミツアキさんの「てんから」は最後だったかもしれないな~。
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これが「ミツアキ毛ばり」です。「Mitsuaki Kebari」
青焼きのアユかけバリに白の木綿糸でチチワを作り蓑毛はキワダシングロ、石徹白地域の標準的な毛ばりです。痛み具合から察すると、何匹もイワナを釣った毛ばりでしょうね。ミツアキさんはバイスなどの道具は何も使わず素手でハリを持って巻くんです。もめん糸とニワトリの羽根だけで作れるシンプルな毛ばりですが、フライフィッシングでもこのようなスタイルがドライフライのスタンダードタイプと呼ばれていますね。
ハヤトさんに見せたらこれはだいぶ古いものだなと言われました。
今となっては貴重な逸品ですから大切に保存します。

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ミツアキさんを偲んで、似たような毛ばりを巻いてみました。
青焼きのアユかけバリは昔はどこの釣り道具屋にもあったものですが、今はもうあまり見かけません。古い釣り道具屋の長期在庫の中から改良トンボ型耳なしというハリを見つけたので買ってきました。細軸のハリなので強い合わせの人では使いこなせないかもしれませんね。
いとしろアウトドアフェスティバル2016の会場でお見せします。
そうだ、昔の人のように毛ばりを手だけで作る実演もしようかな。
Mitsuaki Kebariも巻いてみせますか。
石徹白てんから研究会用につくった竹竿もいっぱい持ってくからね。

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何を見て笑ってたんだろう。
ミツアキさん、安らかに眠ってください。




本当に大切なのは自然に感謝する精神だから・・・・。
な~んてね。
一生わからないのかね~。

アインシュタイン曰く
「この世に無限のものが二つある
ひとつは宇宙、もう一つは人間の愚かさ、
宇宙のほうはたぶん?だが後者は間違いない」






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by itoshiro-sp | 2016-05-25 10:37 | てんから  

馬の毛を縒って作るてんから糸

「石徹白てんから」では縒り糸をテーパーに仕立てたラインを使います。昔は馬のシッポの毛を使用していましたが入手が困難なため、今ではナイロン糸が使用されています。
私のラインはナイロン1.2号を5本縒り、4本縒り、3本縒りと段落としにします。最近、主流のレベルラインより重いですが自分好みのテーパーが自在に作れますし、テーパーラインのテンカラはゆったりとしたリズムの釣りになります。そして何よりも自分で自分好みのラインを作るという喜びがあります。作るといっても特別な道具はいりません。自分の親指と人差し指で縒るだけなんです。自分で作ったもので釣りをするって楽しいですよ。
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今回は馬の毛が手に入りましたので、昔ながらの馬糸(バス)を作ります。
白毛と黒毛がありますが、一般的に白毛の方が良いと言われてますが、あまり変わらない気がします。ま~色的な好みかな。
馬の毛はナイロンほど強くないので白でも黒でも強く縒ると切れます。慎重に縒っていかなければなりません。

馬毛ラインも何本か作ったので石徹白フィッシャーズホリデーで販売予定です。
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右手の親指を前に押し出すように3センチくらいづつ縒っていきます。
馬の毛は太さが不揃いなので縒りにくいですが、少しづつやって行けばだいじょうぶです。
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普段「おいで」って言っても来ないくせに、こっちが何か始めるとすぐ邪魔します。

竿、糸、毛鉤、すべて自分で作った物で出来る釣りってないですよね。昔の人と同じ道具が現代でも通用するというか、まったく問題なく使えるってすごいことだと思いませんか。
私はこの究極のシンプルさにこそフライフィッシングでは感じられないロマンを感じます。それに魚に対して間違いなくフェアーですよね。
ちなみに、私がテンカラ釣りをした場合レベルラインでやっても馬毛ラインでやっても同じ結果になるはずです。つまりどちらかのシステムの方が良く釣れるなんてことではなく、単純にヘタな人よりうまい人の方が良く釣るという問題です。つまり私は平凡ですからどちらでやっても平凡な結果となります。

ヘタより、うまい方が良く釣る話のついでにエピソードをひとつ、先日石徹白での作業後、若いイトシロチルドレン二人が釣りをしたそうです。始めようとしたら、一人の子がリールを忘れてきました。さてどうしようと思ったとき彼らが乗っていた軽トラ(私の軽トラ)のボックスの中に私のテンカラ道具(昔テンカラ)一式を見つけました。もうこれでやるしかない状況です。つまり一人はいつものフライ、一人は一回もやったことのない初めての「石徹白てんから」しかも竹竿・・・・結果はテンカラの子が6匹、フライの子が1匹・・・・やっぱりフライよりテンカラの方が釣れる?・・イヤ~イヤ~・・ただうまい子の方が釣れただけなんですわ。
テンカラをやった子が後で言ってました。「フライだったらもっと釣れたのに」って。

PS,
これがもしも、テンカラしかやったことがない人が、竿を忘れてフライでやらなければならなくなったら、どうだったんだろうと想定するとちょっと面白いですね?
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by itoshiro-sp | 2015-05-29 16:23 | てんから  

何事でもこだわりが重要です。(てんからのおすすめ)

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2年前の初夏、源流のイトシロイワナHap-new36です。美しいと思いませんか?背中の盛り上がりも見事でしょ。完璧な姿態ですね。
また逢いに行けるかな~。そのためには早く体調を戻さないとね。


前にも書いたことがありますが、
「てんから」からフライフィシングに転向した時ずいぶん苦労しました。けっきょく流れの攻略かたが全く逆なんですよね。フライフィシングは短い竿でラインを繰り出し毛鉤を投射しますので、投射後はラインがべったりと水面に浮かぶわけです。そうなるとラインが流れにもまれ毛鉤が引っ張られてしまいうまく流せません。ここが難しいんです。
このために「そもそも日本の渓流ではフライフィシングは無理なんだ」とよく言われていますが、そんなことはなくて、フライフィッシングでもうまく流せるようになれば、かえって「てんから」より場所を選びません。広いところで遠くから釣ることはもちろんですし、木のかぶさった藪沢まで問題なく釣れます。私も「てんから」をやっていた時の方が開けた川を選んでいましたし、その日入る場所に応じてラインの長さを変えたりしていました。
話を戻します。「てんから」は糸をほとんど水につけないことで毛鉤までの流れをかわす釣りです。この部分がフライフィシングと全く逆なんですが、遠くまで釣ることをあきらめてしまったのか、もしくはその必要がなかったのでしょう。
「てんから」の場合、流れをかわせる距離は竿の長さで決まってきます。と言っても、扱える竿の長さにも限界があるので、3m~5mくらいが主流ですから実際の釣りにおいてアプローチの距離はフライフィシングには及びません。届く距離まで近づくしかありません
日本でも昔の人が、この部分をあきらめなかったとしたら、もしくは遠くを釣ることを必要としたならば、もっとシステマチック(リール竿)に進化して、けっきょくはフライフィシングに近いものになってたかもしれませんね。

そうならなかったおかげで「てんから」には簡素にして潔い日本的な美が伝わりました。
フライフィッシングを好むイヴォン シュイナード氏(パタゴニア総帥)が「てんから」に魅せられるのも「少し油っこいフライフィッシングもいいけどたまにはあっさりしたものが・・・?」なん~て、ところかもしれないですね。

 両方の釣りをやってきた私は「てんから」は「のべ竿のシンプルフライフィッシング」でありフライフィッシングは「リール竿のてんから」というほとんど同じものだと考えてます。
この釣りにはどちらにも同じように趣味性の高い奥深さとなんとなく高貴さがあります。
ただし高貴さと言うためには、釣り人自信がこだわりを持たなければならない大事なことがあります。それは「てんから」をするときは「てんから」の伝統的な作法に従いフライフィッシングの時はフライフィッシングの伝統的な作法に従うというこだわりです。作法といっても「てんから」の時は「てんから毛鉤」しか使わないこと、フライフィッシングの時はナチュラルドリフトの釣りを基本としなければならないってことだけです。

 かの開高健氏が、「釣りというものは所詮、魚を鉤で引っかけて捕まえることなんだけど、それをドン百*的にやるか貴族的にやるかということがとても重要なんだ」と言ってます。
私ももちろん貴族的にやりたいと思っています。 
 それともあなたは、「どちらが良く釣れるか?」なんて「ドン百*的」な価値感を求めるのですか。
さ~、皆さん、どちらの釣りもやってみてください。
とくにフライフィッシングの方「てんから入門」をおすすめします。日本の伝統文化なんですからやっといたほうがいいですよ。
その逆の「てんから」しかやってない方も、ぜひフライフィッシングに挑戦してみてください。
やってみないと分からないことがたくさんありますよ。

以上、長文でごめんなさい。

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これが日本の伝統毛鉤です。「キワダシングロ」「カッケ~」でしょ。
今がんばって巻いてます。石徹白フィッシャーズホリデーで販売しますよ。



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フライではハックルとよばれるんですが「てんから」では「みの毛」と言いまして、雄鶏のエリの毛です。
これは昔から珍重される「みの毛」材、キワダシングロ、です。これを巻き付けると上の毛鉤のようになります。
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by itoshiro-sp | 2015-04-25 17:25 | てんから  

「Sinple Fly Fishing」って本?

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アメリカの娘夫婦の所に行ってきた姉さんがお土産に「本」を買ってきてくれました
なんでも、NYのpatagonia shopで偶然見つけたそうだ。なんとなく「弟が好きそうな本だな」と思ったそうだが、まさに神対応である。
パタゴニアの総帥であるイヴォン・シュイナード氏がTENKARAのことを取り上げている。
$24,95もする立派な本です。
もしかしてアメリカでTENKARAブーム?ほんとに~?って感じですが、少なくともイヴォンさん的には本気みたいです。こうなったら石徹白の伝承てんからのこともイヴォンさんに知ってもらわなくっちゃ。
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中身はこんな感じです。
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写真がスゴイです。(字は読めないから写真ばっか見てます)
でもこの写真、石徹白川なら撮れるかもしれないですね。誰か挑戦してみてください。
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by itoshiro-sp | 2015-04-24 07:18 | てんから  

てんから竿、作ってはいるものの・・・?

最近の「てんから」やる人に竹竿なんか使う人いるんでしょうかね?
グラファイトロッドしか使ったことのない人には無理かもしれませんね。
重くてびっくりするでしょうね。
重いし、グラファイトとは全く違うリズムにきっと戸惑うことでしょう。
とくに最近、主流のレベルラインになれた人には勝手が違うと思います。というかカーボンロッドならハリス1.5号で魚がぶっ飛んでくるような合わせでも折れたりしないけど、竹竿でそんな釣り方したらダメですよ。でもゆっくり合わせを信条としている私的には問題なく使えていますし、釣りにおいてはチャカチャカしたテンポよりゆったりしたリズムが好きだし・・・?
その昔の「てんから」のパイオニアたちはみんな竹竿だったしターゲットである魚たちは今と何も変わりはない訳ですから、使えるはずなんです。
余談ですが、イトシロの友人、マサユキさんが子供の頃の思い出を話してくれたんですが、彼のおじいさんはときどき石徹白から荘川の尾上郷まで山を越えて泊まりがけでイワナ釣りに行ってたそうです。3日くらいかけてたくさんイワナを持って帰ってきたそうですが、おじいさんの竿は竹で作った10尺のてんから竿で、自作した「一本竿」なので長いまま険しい山道を歩いて行ったそうです。竿も1本だけしか持って行かなかったでしょうから、折れないようにさぞ慎重に使ったんでしょうね。今から50年以上前のスローな時代の話ですが昔の暮らしが目に浮かんできませんか。今の時代、昔のように竹竿を日常的に使うことは、それなりにやせ我慢が必要になるのかもしれませんが、「日本の伝統的な釣りをやってるんだ」と胸を張るために、あえて竹竿を使って見ませんか

そんな昔ながらの「石徹白てんから」に興味のある方は「第15回石徹白フィッシャーズホリデー」(6月6日7日)でお会いましょう。


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こんな本を読んで「てんから釣り」に挑戦したものです。
中でも「かげろうの釣り」加藤須賀雄著は今読んでも勉強になります。もう35年も昔です。

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こんな本を読み山釣りにどっぷりのめり込んで行きました。山本素石氏の随筆は素敵ですよ。

その後、フライフィッシングに転向したんですが、あくまでも「てんから」が私の毛針釣りの原点であり日本の伝統文化として守って行きたいと思っているんです。
ちなみに、欧米からきたフライフィッシングの方が竹竿の愛用者が多いのはなぜなんでしょうね?
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by itoshiro-sp | 2015-04-18 17:03 | てんから